みなさん、こんにちは。今日はオイルシールの向きのお話です。
G650GSのスイングアームのベアリングを交換したとき、新しいオイルシールをどちら向きに入れればよいのか迷いました。インターネットで調べると「刻印がある方が外側」という情報をよく見かけますが、私が使ったシールは、そのルールだけでは向きを決められないものでした。
そこで、シールメーカーの資料を調べて分かったことをまとめます。
結論:オイルシールの向きはリップで決める
- 基本は、リップ(バネが見える側)を、オイルやグリースがある側に向ける。背面は外側(大気側)
- 刻印は背面に入っていることが多いので、「刻印が外側」で合うことも多い。ただし例外がある
- 二枚リップのIKO DS型は、グリース漏れを防ぎたいなら主リップを内側、泥や水の侵入を防ぎたいなら主リップを外側
- 迷ったら、車種のサービスマニュアルやシールメーカーの資料で確認する
オイルシールの基本:役割と向き
オイルシールの役割
オイルシールは、フロントフォーク、ホイール、エンジン、スイングアームなど、バイクのいろいろな場所に使われています。
役割は2つです。中のエンジンオイル、フォークオイル、グリースなどが漏れるのを防ぐことと、外から水やほこり、泥が入るのを防ぐことです。
このうち、中の油を保持するのがシールリップと呼ばれる先端の部分です。リップは、内側の圧力を受けて軸に密着するように作られているので、リップの向き=シールの向きになります。
基本の向き:リップを密封する側へ
シールメーカーの桜シールの資料では、「シールリップがシール対象物側に寄るように(バックフェイスが大気側になるように)」組み込むと説明されています。(桜シール:オイルシールの取付方法)
つまり、一枚リップの一般的なオイルシールなら、リップ(バネが見える側)をオイルやグリースのある内側に、平らな背面を外側に向けます。
「刻印が外側」は目安。例外もある
一般的なオイルシールは、メーカー名やサイズなどの刻印が背面に入っていることが多いため、「刻印が外側」で合う場面も多いです。
ただし、刻印のないシールや、両面にリップがあるシールもあります。また、目的によってわざと逆向きに付けるシールもあります(このあと紹介するDS型)。刻印だけで決めずに、リップの向きを目で見て確かめるのが確実です。
フロントフォークのオイルシールの向き
フロントフォークのオイルシールの役目は、フォークオイルを中に閉じ込めることです。リップ(バネが見える側)をフォークオイル側、つまり下(アウターチューブの奥)に向けて入れるのが基本です。その上に、泥やほこりを防ぐダストシールが入ります。
フォークの構造は車種によって違うので、最後は必ずその車種のサービスマニュアルで確認してください。
オイルシールを入れるときは、リップにラバーグリスを塗り、専用のプッシャーでまっすぐ押し込むとリップを傷めにくいです。XR250 BAJAのフロントフォークを組み立てたときの手順は、こちらで紹介しています。
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実例:二枚リップのIKO DS型は目的で向きが変わる
G650GSのスイングアームのベアリングに使ったシール
私が向きに迷ったのは、G650GSのスイングアームのベアリングを交換したときに使った、日本トムソン(IKO)のオイルシール「DS22284」です。品番の数字のとおり、内径22mm・外径28mm・幅4mmのシールです。
ベアリングの交換作業は、こちらの記事で紹介しています(「3.オイルシールを圧入する」で入れたのがこのシールです)。
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使ったものとは違いますが、似た貫通ドライバーはこちらです(参考)。
これが、そのシールです。刻印がある側です。

刻印がある側を斜めから見るとこんな感じです。

刻印がない側です。

刻印がない側を斜めから見るとこんな感じです。リップが2枚並んでいるように見えます。なんとなく、こちら側を外側にしたくなったのが、調べるきっかけでした。

メーカーの説明とカタログ
日本トムソンさんのホームページで調べると、このシールは「ニードルベアリング用シール」で、次のように書かれていました。
IKO ニードルベアリング用シールは、鋼製のリングと特殊合成ゴムからなる断面高さの小さなシールです。このシールは、IKO ニードルベアリングの断面高さに合わせて製作されているので、組合せ軸受の側面に直接組み込むことによってグリースの漏れと異物の侵入を防ぐ効果があります。内輪付ニードルベアリングにシールを組み合わせる場合は、広幅内輪を使用する必要があります。
さらに、製品カタログには次のように書かれています。


出典:日本トムソン株式会社 製品カタログ「ニードルベアリング用シール」(PDF)
まとめると、次のとおりです。
- 一枚リップのOS:グリースの漏れを防ぐならリップを内側、異物の侵入を防ぐならリップを外側
- 二枚リップのDS:グリースの漏れを防ぐなら主リップを内側、異物の侵入を防ぐなら主リップを外側
私のシールは「DS」なので二枚リップです。DS型は、何を優先するかで、外側に向ける面が変わるということです。単純に「刻印がある方が外側」とは決められません。
私は主リップを外側に向けた
スイングアームのピボット部分は、走行中に泥や水をかぶりやすい場所です。そこで私は、異物の侵入を防ぐことを主な目的として、主リップを外側に向けて圧入しました。
反対に、グリースを中に閉じ込めることを優先したい場所なら、主リップを内側に向けます。どちらを優先するかを先に決めてから、向きを選んでください。
ベアリングのグリスアップには、耐水性のある極圧グリスを使っています。
今は、メーカーさんがこのような情報をインターネットで公開してくださっているので助かります。
向きを間違えるとどうなる?
リップがオイルやグリースの側を向いていないと、中の油が漏れやすくなります。フロントフォークなら、オイル漏れの原因になります。
異物の侵入を防ぐ側のリップが逆を向いていると、雨水や泥が入りやすくなり、ベアリングのサビや傷みの原因になります。
シールを交換するときは、外す前に元のシールの向きを写真に撮っておくと安心です。
まとめ
- オイルシールの向きは、刻印ではなくリップの向きで決める
- 基本はリップをオイルやグリースの側へ。「刻印が外側」は目安
- フロントフォークは、リップをフォークオイル側(下)へ
- 二枚リップのIKO DS型は、目的によって主リップの向きが変わる。私はスイングアームで、異物の侵入を防ぐために主リップを外側にした
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※筆者(自己整備歴18年・整備士資格なし)が、自分のG650GSで作業した内容と、メーカーの公開資料をもとにまとめています。部品の向きや作業方法は、車種のサービスマニュアルやメーカーの指示を優先してください。