バイク好きなら一度はその名を耳にしたことがあるはず。1992年、当時のホンダが持てる全ての技術を注ぎ込み、「市販車初の楕円ピストン」を引っさげて登場した伝説のマシン、HONDA NR(RC40)。
今回、幸運にもホンダドリームで展示されている実車を撮影することができました。 当時、520万円という大卒初任給の約30倍(!)もの価格で販売されたこの「走る宝石」には、一体どんな魅力が詰まっているのか? 貴重な写真とともに、その歴史と驚愕のスペックを振り返ります。
1. ホンダの意地が生んだ「楕円ピストン」の正体
NRを語る上で欠かせないのが、世界で唯一無二の「楕円ピストンエンジン」です。
なぜ「楕円」だったのか?
当時のロードレース(WGP)のレギュレーションでは、気筒数が4気筒までに制限されていました。しかし、高回転化して出力を稼ぐにはバルブの数を増やしたい。 そこでホンダは「1つのピストンを長く(楕円に)して、そこに8本のバルブを配置すれば、実質V8エンジンのような性能が出せるのではないか?」という狂気的な発想に至ります。
- 1気筒あたり8バルブ(吸気4・排気4)
- 1気筒あたり2本のコンロッド
- 1気筒あたり2本の点火プラグ
まさに「エンジニアの意地」が形になった究極のパワーユニットなのです。
2. 1992年当時、300台限定で「520万円」の衝撃
1992年5月に発売されたNRの価格は、驚きの5,200,000円。 当時のホンダのフラッグシップ「VFR750R(RC30)」が148万円だったことを考えると、いかに桁外れだったかがわかります。
- 国内販売予定300台
- カウルにはカーボン(CFRP)を採用
- チタン製コネクティングロッド
- マグネシウムホイール
- 世界初のチタンハードコート・スクリーン
素材の一つ一つが当時の最高級品。現代の価値に換算すれば、1,000万円を軽く超えるスーパーバイクと言えるでしょう。
3. 【実車フォト】細部まで作り込まれた「走る宝石」
今回撮影した写真から、NRの凄みを見ていきましょう。
展示の状態。解説のポスター付き

このNRの所有者は富山の「タカギセイコー」さんとのこと。
フロントビュー

流線型で、いかにも空気抵抗を減らそうとした形に見えます。
サイドビュー

横から見てもカウルに角が見られず、空気抵抗を考えてのことか滑らかなフォルムですね。
OVAL PISTONステッカー

車体に一枚だけ「OVAL(楕円) PISTON」が貼られていました。
リア周り

迫力のリアビューです。片持ちスイングアームに、カウルは底面にも設置されています。
リアサイドカウルに「NR」ロゴ

サイドをやや後ろから撮影しました。リアのカウルも、燃料タンク、シートから流れるような形状になっています。
リアカウルには「NR」のステッカーが貼られています。当然?タンデムシートはありません。
独特の質感を放つコクピット

メーター周りには本物のカーボンパネルが惜しげもなく使われています。 中央のデジタルスピードメーターは、奥行きを感じさせるミラー投影式。アナログのタコメーターは15,000rpmからレッドゾーンという高回転仕様です。
時代の先を行くセンターアップマフラー

今でこそ珍しくないシート下出しマフラーですが、この時代にこれほど美しくパッケージングされていたのは驚きです。テールサイドの「NR」のロゴが誇らしげですね。
意外なアナログ要素?チョークレバー

超ハイテクマシンのNRですが、しっかりと「CHOKE」のレバーが存在します。 当時のPGM-FI(電子制御燃料噴射)技術と、まだ残るアナログな操作感の融合に、時代の過渡期を感じてグッときます。
4. スペック詳細(主要諸元)
| 項目 | 内容 |
| 型式 | RC40 |
| エンジン | 水冷4サイクルDOHC4バルブV型4気筒 |
| 総排気量 | 747cc |
| 最高出力 | 77ps / 11,500rpm(国内仕様) |
| 最大トルク | 5.4kg-m / 9,000rpm |
| 車両重量 | 244kg(装備) |
| 当時の価格 | 5,200,000円 |
HONDAのニュースリリースの記事です。
市販車世界初の楕円ピストン・エンジンを搭載したハイグレードな次世代ロードスポーツバイク「ホンダNR」を発売https://global.honda/jp/news/1992/2920406.html
https://global.honda/jp/news/1992/2920406.html (ホンダニュースリリース。1992/4/6)
ちなみに、HRCのページ(https://www.honda.co.jp/HRC/fun/wallpaper/)では、NR車体や楕円ピストンの壁紙を配布してくれています。
HONDAにとってもNRは特別な車両だったと想像できます。
5. まとめ:NRはホンダの「夢」そのものだった
NR(New RoadあるいはNew Racing)という名前が示す通り、このバイクはホンダが次世代のスタンダードを模索し、技術の限界に挑戦した結晶です。
GooBikeを見てみるとNRの価格は「ASK」であったり、2,000~3,600万円となっています(2026年4月現在)。驚愕!
もし街中やショップで見かけることがあれば、それは日本のバイク史における「最高傑作の一つ」を目撃していると言っても過言ではありません。
いいものを見せていただきました。
HONDA Dream 富山さん、ありがとうございました!!


