バイクのバッテリーを外す順番は、必ず「マイナス(−)端子 → プラス(+)端子」です。取り付ける際は逆順の「プラス(+)端子 → マイナス(−)端子」となります。この順番を守らないと、工具が車体フレームに接触した瞬間にショート(短絡)し、激しい火花や電装系の故障、火傷の原因になります。
この記事では、バッテリーを取り外して室内で充電するまでの安全な手順と必要な工具を解説します。作業実例として、カウルのネジが多く手順が複雑なBMW G650GS(単気筒)での取り外し工程を写真付きで詳しく紹介します。
バッテリー端子を外す順番と安全対策
バッテリー脱着作業で最も重要なのは、端子を扱う順番です。
- 外すとき:マイナス(−)端子 → プラス(+)端子
- 取り付けるとき:プラス(+)端子 → マイナス(−)端子
なぜマイナス端子から外すのか?(ショート防止の理由)
バイクの金属フレームやエンジンは、バッテリーのマイナス極と電気的につながっています(ボディアース構造)。
プラス端子から先に外そうとすると、プラス端子に当てた金属工具(ドライバーやレンチ)が誤ってフレームなどの金属部分に触れた瞬間、プラス極とマイナス極が工具を通じて直結し、ショート(短絡)してしまいます。大電流が流れて火花が飛び散り、配線が焼き切れたりバッテリーが破損する恐れがあります。
最初にマイナス端子を外しておけば、フレームとマイナス極の接続が遮断されます。その後にプラス端子を外す際、仮に工具がフレームに触れても電位差がないため、ショート事故が起きません。
作業に必要な工具
今回の作業で使用した工具です。車種によってボルト規格が異なるため、事前に確認してください。
- トルクスレンチ(T25など、カウル固定ネジ用 ※BMW車の場合)
- プラスドライバー(端子ボルト用)
- 小型ラチェットまたはフィンガーラチェット(狭所用)
- 電動ボールグリップドライバー(ネジ本数が多い車種の作業効率化)
- 絶縁用マスキングテープまたはビニールテープ
- バイク用バッテリー充電器
【実例】BMW G650GSのバッテリー取り外し手順
BMW G650GSのバッテリーは、シート下ではなく一般的なバイクでガソリンタンクがある位置(ダミータンク内)に搭載されています。センターフェアリングや右サイドカウルを取り外す必要があるため、ネジ本数が多く手間がかかります。

G650GSのバッテリーは、写真中央の黒いカバー(センターフェアリング)の内側に収まっています。
1. シートを取り外す
カウルを外す前提として、まずシートを取り外します。

リアキャリア後部にあるカバーのキーシリンダーにメインキーを差し込み、ロックを解除してカバーを外します。

カバーを外すと内部に赤いレバーがあります。このレバーを引くことでシート後方のロックが外れます。

赤いレバーを引きながら、シート後方を持ち上げます。

シートが外れました。これでセンターフェアリング固定ネジへのアクセスが可能になります。
2. センターフェアリングを取り外す

センターフェアリングを固定しているトルクスネジを外していきます。ネジは10本あり、奥まった狭い箇所もあるため、手回し工具だけだと時間がかかります。
ここでは作業効率化のため、ベッセルの電動ボールグリップドライバーを使用しています。狭い場所へのアクセスと早回しが容易になります。
詳しい使用感や使い勝手については、下記の工具紹介記事を参照してください。

センターフェアリングは、ネジを外すだけでは外れません。中央にあるエンジンオイル給油口のフィラーキャップも外す必要があります。

オイルフィラーキャップは車載工具のプラグレンチでも外せますが、脱着頻度が高いため、自作の特殊工具を使って作業しています。
フィラーキャップ脱着工具の自作やオイル交換手順については、下記の記事で解説しています。

センターフェアリングが外れました。

これでバッテリー本体が視認できるようになりました。駐輪場所の近くにAC100V電源がある環境であれば、この状態から車載のまま充電器を接続して充電することも可能です。今回は屋外電源が確保できない環境のため、バッテリーを完全に車体から降ろします。
3. 右側サイドカウルを取り外す
バッテリーを安全かつスムーズに引き抜くため、右側のサイドカウルも外します。

右サイドカウルを外すには、写真の黄色矢印で示したネジ3箇所と、グロメット固定部1箇所を取り外します。センターフェアリングの10本と合わせて、外すネジは合計13本になります。

右サイドカウルが外れ、バッテリー全体に手が入るスペースが確保できました。
4. 端子の取り外しとバッテリーの引き抜き
端子の取り外しに入ります。前述の通り、必ずマイナス端子から先に外します。

端子周辺はスペースが狭いため、ストレートのフィンガーチップラチェットにプラスのドライバービットソケットを装着してボルトを緩めています。柄の長いドライバーが入らない狭所でも確実にトルクをかけられます。

外したマイナス端子の配線は、作業中の反動でバッテリー端子へ勝手に接触しないよう、マスキングテープ等で車体側に固定・絶縁しておきます。
続けてプラス端子を外します。さらに、バッテリー側面に接続されている排気用のブリーザーチューブ(指で示している透明なホース)を忘れずに引き抜きます。

固定用ゴムバンドを外し、バッテリー本体を真上に引き上げます。周囲の配線やハーネスが引っかかりやすいため、無理に引っ張らずクリアランスを確認しながら慎重に取り出します。
バッテリーの点検と室内での充電

外したバッテリーの点検を行います。今回の車両に搭載されているバッテリーは開放型(ベント型)です。
各セルの電解液面を確認したところ、下限ライン(LOWER LEVEL)付近まで減少していたため、バッテリー補充液(精製水・蒸留水)を規定ラインまで補充しました。
※補充に水道水を使うと不純物で極板が劣化するため、必ずバッテリー専用の精製水を使用してください。
バイク用充電器での充電作業

バッテリーを室内に移動し、充電器を接続します。使用した充電器はCTEKのJS800です(現在は生産終了品)。
バイク用バッテリーは容量が小さいため、自動車用の大電流充電器を使うとバッテリーを痛める原因になります。必ずバイクに対応した低電流(0.8A〜1A程度)の維持充電・トリクル充電対応器を使用してください。

充電を開始します。充電器の取扱説明書によると、フル充電までは約10時間かかります。開放型バッテリーは充電中に可燃性の水素ガスが発生するため、換気の良い場所で行い、火気は厳禁です。
なお、長年愛用してきたJS800の買い替え候補としては、二輪向け充電器として実績のあるオプティメイト(OptiMate 4 Quad Program等)を検討しています。
バッテリー上がりの主な原因と症状
バイクに乗ろうとした際に次のような症状が出た場合、バッテリー上がり(電圧低下)が疑われます。
- スタータースイッチを押してもセルモーターが回らず、「カチッ」とリレー音だけが鳴る
- メインキーをONにしてもヘッドライトやテールランプが点かない(または極端に暗い)
- メーターパネルの液晶表示やインジケーターランプが反応しない
主な原因は、長期間乗らなかったことによる自然放電です。特に化学反応が鈍くなる冬季や、長雨で乗れない梅雨時期、酷暑による劣化が進む夏場は放電が進みやすいため注意が必要です。
まとめ:端子の順番を守ればバッテリー脱着は安全に行える
バイクのバッテリー脱着は、端子を扱う順番「外すときはマイナスから、付けるときはプラスから」を守ることが事故防止の鉄則です。
BMW G650GSのようにネジ本数が多い車種でも、手順通りに外していけばDIYで安全に対処できます。完全に放電しきってサルフェーション(結晶化)が進行している場合は充電しても電圧が復帰しないことがあるため、充電後にセルモーターが勢いよく回らない場合はバッテリー本体の寿命と判断し、新品への交換を検討してください。